種だけをもって去る

「私たち、もう結婚する必要ないんじゃないかしら」と唐突に彼女が言った。

「なぜ?」

「だって、これを見て」とお腹を手で撫でている。

なるほど、確かにそれは、誰がみても孕んでいるお腹だった。

「結婚の目的が達成されてしまった以上、もう改めて結婚などという面倒な手続きをすることないでしょう」

どうも腑に落ちない彼女の言い分ではあったが、「それはそうだ。君のいうことは正しいと思う」と上の空で応えると、彼女は呆然としている私を尻目にさっさとその場を立ち去った…次の男を探しに…