種だけをもって去る
「私たち、もう結婚する必要ないんじゃないかしら」と唐突に彼女が言った。
「なぜ?」
「だって、これを見て」とお腹を手で撫でている。
なるほど、確かにそれは、誰がみても孕んでいるお腹だった。
「結婚の目的が達成されてしまった以上、もう改めて結婚などという面倒な手続きをすることないでしょう」
どうも腑に落ちない彼女の言い分ではあったが、「それはそうだ。君のいうことは正しいと思う」と上の空で応えると、彼女は呆然としている私を尻目にさっさとその場を立ち去った…次の男を探しに…
欲望の先取り
「何が欲しい?」と尋ねても具体的な答えは期待できない。顧客は自分の求めるものを明確に言うことができない。
欲望を形にするのが、仕事のはじめの段階である。つまり欲望の先取りにエネルギーを傾注させる。
逆のがんばり
笑いを取ろうとがんばるから受けない。
笑わせようとする「がんばり」が相手に見透かされる。
「笑って!こんなに努力しているんだから!」
これに対し相手側の「だから笑ってあげましょう」では面白くない。
自然発生的な笑いは、相手の方からふっと湧きでる。笑いを強制しようと努力すれば失敗する。
人は皆、笑いたいときに笑うものだ。
餌は広告
「おっとまた釣れた」
「何が釣れた?」
「もちろん人間さ」
「餌は?」
「教えない」
「固いこと言うな、教えろよ」
「餌はね…広告だよ」
たぶん
ピアニストは親が死んでも毎日練習する。
立派な解
解がないというのは、立派な解である。